「神戸の北野町には地域ねこがたくさんいるらしいって!」
友人に教えてもらい、路地裏を歩き数時間、いまだにねこは私の前には現れてはくれない。
幸いにも昔、陸上部の中距離選手として活躍していたので足を動かすには慣れているつもりだ。
今は猫好きに加え、おじいちゃんが愛用していたカメラ「キヤノン AE-1」を引っ提げて猫を探しに来た。
(少し疲れたから休憩するかな。)
目に入ったのは外観が緑の特徴的なお店「サンパウロ」
路地にこんなお店があるのか、と思いながらゆっくりと引き戸を開けてみる。
カララン、と温かくドアベルが店内に鳴り響く。
「いらっしゃい」
メガネをかけた店主が声をかけてくれる。
テーブルが4席、どこに座ろうか悩んでいる私を察して、どちらでもお好きなお席に、と。
おずおずと席に着き、メニューを手に取る。
片手一杯に収まる小さなそれは昔大切にしていた写真立てに近いような雰囲気がした。
「アイスコーヒーを、お願いします。」
注文して、店の中を眺めているとかわいらしい照明や小さな木彫りの人形が至る所に並んでいる。
童話に迷い込んだような感覚になっていると、マスターがスッとグラスを出す。
赤ワインを入れるかのような大きいグラスを目の前に置かれ、マスターのポケットから、すかさず、少しだけ袋の破かれたストローが差し出される。
口に含むと豆の酸味や甘みをしっかりと感じる芳醇なコーヒーの味。
喉をやわらかく通っていく飲み心地は大切に味わいたくなる。
グラスに入っている黒い一個の氷。
せっかくのアイスコーヒーが薄まらないように凍らせたコーヒーの氷を入れてくれている丁寧な一杯。
胸ポケットにそっと触れ、ピースを一本を取り出す。
頭の中の考え事に蓋をして、ぼうっと窓の外の景色を見る。
「ポッポー、ポッポー、ポッポー。」
そばでカッチカチと時間を鳴らしていた鳩時計が時間を告げてくれた。
店内に流れる空気感を体いっぱいに浴びながら休憩もできたし、引き続き北野の町を歩いてみるか。
「ごちそうさまでした」
わたしは「サンパウロ」を後にした。
店舗情報
店舗 | サンパウロ |
住所 | 兵庫県神戸市中央区山本通2-13-16 サンシャインコート1F |
営業時間 | 9:00~19:00 |
定休日 | 不定休 |